「
媚中
その驚愕の『真実』
」
門田隆将・山上信吾・著/2025 年 WAC
Tomy jr.
《総評》
今やGDP 世界第2 位の経済大国となった中国の外交姿勢とそれに対峙する日本外交のあり方について「週刊新潮」元デスクと前駐豪大使が対談形式で過去現在未来について赤裸々に語る。2026 年衆院選における高市自民大勝によって潮目が変わってきたものの、
戦後日本が政財官共に長く親中(媚中)思想に浸ってきた背景やその理由を中国共産党の思惑や対外戦略と共に明かす
。同時に日本国内の名だたる政治家や外務官僚等の実名を挙げて指弾している。
《構成と内容》
はじめに 日本侵略を他人事と思っていませんか
第1章 致命傷になる中国人ビザ大緩和
第2章 日本はいかに中国の術中に嵌ったか?
第3 章 中国にひれ伏す日本外務省「驚愕の実態」
第4 章 中国のハンドリングをどこで間違ったか
第5 章 牙をむく中国と倶に天を戴かず!
第6 章 日本の「隷属外交」をどう変えていくか
おわりに 眠れる日本よ、覚醒せよ
《著者プロフィール》
◆門田隆将(かどた・りゅうしょう)1958(昭和33)年、高知県生まれ。作家、ジャーナリスト
中央大学法学部卒業、「週刊新潮」元デスク。「この命、義に捧ぐ‐台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡」(集英社、のちに角川文庫)で第19 回山本七平賞受賞。
◆山上信吾(やまがみ・しんご)1961(昭和36)年、東京都生まれ、東京大学法学部卒業後1984年外務省入省、北米第二課長、条約課長、経済局長等を歴任後、駐オーストラリア日本国特命全権大使。2023(令和5)年退官し、外交評論活動展開中。
《読書の経緯》
“台湾有事”が喫緊のリスクとなっている昨今、私は「中国≒中華民国=台湾」が、いつからか「中国≒中華人民共和国」となったことや日本の対中外交姿勢には常々疑問を抱いていた。その矢先、現在所属している某研究会にて本書の存在を知り、読むに至った。
《所感》
まず、対談とはいえ著者等の主張はほぼ同じ傾向にあるため、
本書の内容には一定のバイアスがかかっていると考えて読む必要がある
。つまり日中友好を旨とする「親中」派を「媚中」と呼ぶ反対勢力の「反中」派であり、左右で分ければ2 人共明らかに右派に属することは間違いない。
しかし戦後80 年間は新聞をはじめとするメディアや特定の政党や政治家が現実を無視し極端に左傾化していたことは否めず、本書の主張には一定の理解を覚える
。
近年の中国は台湾有事のみならず
日本に対しても挑発的な戦狼外交を展開している
。尖閣諸島近海に武器搭載の船を出没させ、日本のEEZ 内に勝手に大型ブイを設置し、スパイ容疑で在留邦人を不当拘留し、反日憎悪教育を継続し、その結果、中国版SNS では
「日本人学校はスパイ養成所だ」等という動画が流布され「日本は東風41 型核ミサイル7 発で地上から消える」等の言動が飛び交うまでになっているのに外務省は抗議もしない
のだという。
俄かには信じがたい事ばかりではあるが、その要因を2 人は対談によって多層的な構造的問題として説明する。
まずは外務官僚の問題
として、大使以下の外交官は「
日本の国益より任国(中国大使館関係者なら中国)の顔色を優先してしまう
」ため、本来は毅然とした態度で決裂した方が日本の国益に寄与するケースでも任国を怒らせないように「決裂させずに妥協点を求める」方向に動く。結果として強硬姿勢を取る中国の様な任国の「思う壺」。
次に政治家の問題
として、事務次官のような官僚のトップ人事は政治家の影響力が大きいため、中国に対してハッキリとモノを申す外交官に対しては中国側が政治家に難色を示すことで更迭されたり今後の出世の道が絶たれたりする。そういうことが続くと、それを見ている若手官僚は「
中国に逆らったら後ろ(国内政治家)から弾が飛んでくる
」と、ますますモノを申せなくなる。公明や自民など与党政治家の親中比率も極めて高いのだという。
さらに政治家に対して圧力をかける財界側の問題
として、まだ中国が経済的に遅れていた時期に日本政府が
ODA として開発援助をした際に受注して大儲けした日本企業は多い
。現在でも中国国内の工場などに投資している企業は自社の権益の観点から日中関係の悪化を望まないために親中派になっているケースもあるという。以上、
親中(媚中)派が跋扈するのは、官僚の問題、政治家の問題、財界側の問題、と幾層もの構造的要因がある
と分かる。
そして決定的なのが
中国のハニートラップに代表される籠絡戦略
である。中国側のメディア関係者や通訳等の外交関係者等は全て共産党から送り込まれた筋金入りの工作員であり、
美麗な女性が宴会で一緒に酒を飲みカラオケをしてホテルの部屋にまで来てくれて事に及んで写真を撮られてジエンド
となる。訪中する有名政治家、外交官から企業幹部に至るまで、殆どの日本人が中国のハニートラップの餌食になっているというから恐ろしい!
第二次世界大戦後、米英と共に戦勝国となった「中国」とは、もともと蒋介石率いる国民党の中華民国(=台湾)であり、日本も国際社会も
中国共産党が主導する中華人民共和国は「中共」と呼んで国交すら樹立していなかった
。それがキッシンジャーの忍者外交や田中内閣の日中国交正常化によって「中共」は「中国」として国際社会の一員となり、
今や経済的にも成長を遂げてGDP では日本を抜き米国に次ぐ世界第2 位の経済大国となった
。
中国は台湾とは違って共産党政権であり(共産党は常に正しい存在でなければならないためか)、自らの非は決して認めない
という。またマインド的にも日本人と中国人は全然違うとのこと。日本は相手国をまずリスペクトし対等に振舞おうとするが、
中国人は上下関係でしかものを見ないため、相手が自分より上なら何でもしてもらって当たり前(恩義を感じない)だし、自分が上になれば相手を隷属させるのが当たり前(中華思想)になる
という。
欧米人などアングロサクソンは昔から中国人を弱者として見下し「守ってあげるべき存在」としてきたし、米国は中国がいずれ自由民主主義陣営に入るものと楽観的に考えていたようだ。しかし
中国の民主化への希望は1989 年の天安門事件で完全に絶たれ、さらに2013年に中国がオバマへ政権時代の言質を翻して南シナ海の岩礁埋立てを軍事基地化した事を契機に米国もさすがに中国を警戒し始めたのに日本はまだ平和ボケ状態である
。(2026.6.4)